No.34 解説
この文言は、道元禅師が書かれた、『正法眼蔵(ショウボウゲンゾウ)』「菩提薩タ(ボダイサッタ)・四摂法(シショウボウ)」の中の一節です。「ししょうぼう四摂法」とは、菩薩が一般の人々と摂する四種の方法のことで、一つは「布施(フセ)」、二つは「愛語(アイゴ)」、三つは「利行(リギョウ)」、四つは「同事(ドウジ)」です。
この内の「同事」の原意は、本文中に記されるように、自分と他人と区別無く、一如となって交流し合い、助け合うことです。
道元禅師は、その説示の中で次の様な例を挙げています。「しるべし、海の水をじ辞せざるは同事なり。さらにしるべし、水の海をじ辞せざる徳もぐそく具足せるなり。」つまり、海が水を拒まず全てを呑み込む(ここでは菩薩の包容力)のは同事であるが、水が海を拒まない(ここでは衆生のおおらかさ)という徳も具えているのである、と説くのです。ですから、同事はどちらか一方が相手に対して手をさしのべるのではなく、それを拒まず互いに手をさしのべ合うことによって、同事が成り立つことを強調しているのです。