No.47-2

意外と身近な禅のことば

 次の文章の中に、禅宗に由来する言葉がいくつ含まれているでしょうか。

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 友人のAさんの家に伺うのに喫茶店で待ち合わせをしました。
自宅へ赴き、玄関で両親に御挨拶しました。
客間に通され、床の間を背にし、勧められた座布団に座りました。
しばらく、先日の知事選挙や大学の単位の話など、最近のごたごたを話すと、結局、勉強をしっかりしないとしっぺ返しがあると諭されました。
夕食は懐石料理をごちそうになりました。
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 3つでしょうか、4つでしょうか?答は後半に。

 さて、皆さんは、「坐禅」という言葉をお聞きになったことがあると思います。また、曹洞宗が禅宗の一派であることも御存知だと思います。  それでは坐禅とは何か、禅とは何か、実際に体験なさった方でも御存知無い方が意外と多いのではないでしょうか。まず、禅の歴史について簡単にお話ししてみましょう。
 皆様方は、お寺のご本尊様を御覧になったことが在りますか。多くの寺院ではお釈迦様をご本尊にしていますが、そのお姿は足を組み、手を前で重ねた形だと思います。もちろん、立ったご本尊様や手の組み方が異なる仏様もおられますが。
 その足を組み、手を足の上で組んだ姿が、禅の姿です。本来は、仏教以前からの修行形態の一つなのです。禅とは、インドの古代の言葉で、ディヤーナとかジヤーナと呼ばれるものを、そのまま中国で音写したものです。意味は、定・静慮・思惟修ということで、心の統一と安定、もしくは精神統一ということです。
坐禅は、仏教の修行の基本であり、禅定に入って心を落ち着かせて釈尊は悟られたのです。ですから禅は仏教の根本であると言えるのです。是非、仏像を御覧になって確認して見て下さい。

  【禅宗の成立】

 次に禅宗の展開についてお話しします。インドでは、禅は仏教の修行の基本でしたから、特別禅宗というものは成立いたしませんでした。ところが、中国に入ってきた仏教は独自の展開を示しますが、それはインドとは異なる宗派が誕生したことです。その一つが、唐の時代に成立した禅宗です。  この宗派は、坐禅の修行を根本として、他の修行や経典の勉強などを否定しました。お経を全く読まないというわけではありませんが、釈尊の悟りに習い、より実践的な修行を目指したのです。この教えは、宋代に大きく発展しますが、この時代は日本では丁度、平安末から鎌倉時代に当たります。この時代、曹洞宗の祖師の道元禅師が中国に渡って勉強したり、また中国から多くの僧侶がやってきて、当時流行していた禅の教えを広めたのでした。その中には、禅の思想だけでなく、当時の中国の最新の文化や儀礼も含まれていたのです。

  【日本文化に与えた影響】

 禅が日本文化に与えた影響を見てみましょう。よくいわれるのが、茶道や精進料理への影響です。でもそれだけではありません。
 冒頭の問題の答ですが、10個も含まれています。
 最初は「喫茶」ですが、これは栄西禅師が宋から御茶を飲む習慣を伝え、『喫茶養生記』を著したことにより広まったといわれています。
 さらに、玄関は、「幽玄なる関門」の略で、元来は禅の修行の大きな関門を意味したのです。また、挨拶は、挨はせまり、拶は押し開くという意味で、これは禅宗修行の「問答」を意味する言葉なのです。
 床の間は、禅宗建築の書院造りの影響、座布団は坐禅修行の時の「坐蒲」が日本の日常生活に取り入れられたもの。知事は、禅宗寺院の役職、単位は、坐禅堂での修行僧の坐る「単」の位置をいうのです。
 面白いところでは、「ごたごた」は建長寺二世、兀菴普寧(ごったんふねい)禅師の言葉が能く解らなかったことに依り、「ごったん」が「ごたごた」に転化したのです。
 しっぺ返しは、禅宗の法具の「竹箆」がもとですし、懐石料理の懐石は、元来禅僧が暖めた石を「懐」に入れて空腹をしのいだ習慣によるのです。
 以上のように、禅宗の教えというのは、坐禅がその中心ではありますが、それに伴う文化は日本に大きな影響を与えているのです。


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